インドネシアもデジタル通貨に名乗り

コロナ流行がデジタル決済を後押し

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要点

インドネシアが中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行を計画していると明らかにした。大半の小売決済業者はあおりを受けるが、共生可能なデジタルバンクは未曾有の機会を得ようとしている。


インドネシア銀行のペリー・ワルジヨ総裁は先週、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行を計画しており、どのプラットフォームを使用するかを評価していると述べた

インドネシアでは、コロナウイルスの大流行時にオンライン取引が急増したことを受けて、デジタル決済の推進を主要な政策課題の一つに掲げている。

「インドネシア中銀は将来的に、中央銀行のデジタル通貨であるデジタル・ルピアを発行し、インドネシアにおける合法的なデジタル決済手段とすることを計画している」と、同総裁はストリーミングによる記者会見で語った。

インドネシアのデジタル決済は成長を続けている。インドネシア銀行によると、 2021年4月の「電子マネー取引」(インドネシア銀行の区分では主にQRコード決済、※日本は電子マネーとQRコードを別区分として取り扱っている)の価値は、22.8兆ルピア(約1,800億円)に達し、30.17%(前年比)増加した。デジタルバンキングの取引量も増え続けており、2021年4月には5億7,280万件の取引で60.27%(前年比)増加し、デジタルバンキングの取引額は46.36%(前年比)増加して3,114.1兆ルピア(約24兆円)に達した。

インドネシア銀行によると、「電子マネー」の取引額は2020年に201兆ルピア(約1.54兆円)に達し、2019年の145兆ルピア(約1.11兆円)から38.62%成長している。2020年1月現在、デジタル取引を最も牽引しているのは小売業で28%、次いで交通機関(27%)、食品の注文(20%)、電子商取引(15%)、請求書払い(7%)となっている。

しかし、「電子マネー」のサイズは決済市場のほんの一欠片を占めるのみであり、いま中国がそうしようとしているように、CBDCで置き換えようとするのは、とても妥当なように見える。中国ではすでにデジタル人民元アプリが登場し、これまでペイメントを制してきたAlipayはその「下位ウォレット」の位置を与えられているようだ(詳しくはこちら)。

先進国では、中国型のデジタルウォレットが包括的に普及せず、現在はCBDCへの注目が高まっている。インドネシアのような新興国でも、デジタルウォレットの普及の前に、CBDCに一本化できるのならば、金融政策の中央集権化や金融包摂、金融システムの再編成等のメリットは大きい。

デジタルバンク

CBDCは小売の決済業者の多くを市場から追い出す可能性があるが、CBDCと共生が望めそうな金融ビジネスも存在する。その一つがデジタルバンクだ。インドネシア金融庁によると、インドネシアのデジタルバンクには2つのパターンがあり、第1のタイプはJeniusやDigibankのような商業銀行が導入しているデジタルバンクだ。

昨年12月、インドネシアのジャゴ銀行(Bank Jago)は、デジタル決済サービスを提供するGojek(最近Tokopediaとの合併を発表した)と戦略的提携を結び、同国初のデジタル銀行への道を歩み始めた。Gojek傘下の決済会社を通じてジャゴ銀行の株式の18.02%に相当する約2兆2,500億ルピア(約170億円)相当の株式を取得し、出資比率を従来の4.14%から22.16%に高めた。

この取引は、インドネシアが唯一、東南アジア(ASEAN)諸国の中で、デジタルバンクにライセンスを付与していないことを含みにしている。顧客がGojekの運営するアプリでジャゴ銀行の口座を開設できるようにするにはこれ以外の手段がない。

なぜなら、テクノロジー企業が銀行部門に参入するには、商業銀行や既存の銀行ライセンスを持つ金融機関を買収するしかないからだ。テクノロジー企業と競合せず、協働関係を築けることになったインドネシアの銀行は、インドネシア金融庁のデジタルバンキング規制を歓迎している。

第2のタイプは、テクノロジー企業が地元の金融機関や商業銀行を買収して設立した総合的なデジタル金融機関だ。これらのオンラインバンクは「ネオバンク」とも呼ばれている。

ネオバンクについては、アリババが支援するフィンテック企業のAkulakuが、2019年にBank Yudha Baktiを買収し、その後2020年にBank Neo Commerceにリブランドしたことが嚆矢となっている。同銀行は現在、デジタル・バンキング・システムを準備中であるため、まだ営業していない。昨年9月のCNBCインドネシアのインタビューで、Bank Neo Commerceの会長であるチャンドラ・グナワンは、同プラットフォームが中国企業のHuaweiやSunlineと協力して、モバイルおよびインターネットバンキングサービスを開発すると説明している。

Bank Neo Commerceはインドネシア初のネオバンクになる予定ですが、他のテクノロジープラットフォームもこの分野に参入している。アナリストは、インドネシアのデジタルバンキング分野に参入する技術系企業、特にEコマースプラットフォームが増えてくると予測している。ネオバンクは、小売や零細中小企業の分野で、金融サービスを提供することが期待されている。

しかし、デジタルバンキングに関する新しい規制は、金融庁が投資家にデジタルバンクライセンスを付与するかどうかを含め、2021年半ばまでに発表される予定だ。しかし、金融庁はどのような方向性を取るかについては曖昧なままだ。

デジタルバンクの普及はインドネシアの金融業界をすでに変えつつある。金融庁の銀行研究・規制担当総局長であるアヌン・ヘリアントは、5月初旬、国内で営業している支店数が減少していると明らかにしている。 これまでに商業銀行(イスラム銀行を除く)の支店数は約5,000件減少した(15.1%の減少)と推定されている。

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