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アントグループは中国政府の傘下入りか?
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アントグループは中国政府の傘下入りか?

デジタル人民元と国営企業への”協力”要請が迫る

吉田拓史 Yoshi
May 12, 2021
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"President Cyril Ramaphosa tours exhibition centre Museum of the Alibaba Group" by GovernmentZA is licensed under CC BY-ND 2.0

平日朝6時発行のAxion Newsletterは、デジタル経済アナリストの吉田拓史(@taxiyoshida)が、最新のトレンドを調べて解説するニュースレターです。同様の趣旨のポッドキャストもあります。ぜひご登録ください。

要点

アリババの金融関連会社であるアントグループの各事業は厳しい規制の対象となり、デジタル人民元と国営企業の傘下に収まる展望も見えてきた。


国営経済メディアの中国証券報が10日に伝えたところによると、アントが30%の株式を保有するネット銀行であるMYbank(网商银行)は、一部の利用者が自分の口座と中国のデジタル人民元アプリを繋げることを許可しているという。

中銀の発表や報道内容を基に推測すると、デジタル人民元アプリは、下位のウォレット(サブウォレット)として銀行口座を紐付ける構造になっている。MYbankは、テンセントの関連会社であるWe Bank(微众銀行)とともにこの銀行口座を提供する最初の民間銀行になる運びだ。

これまでアントは、プラットフォームとして規制をすり抜け、アントとアリババのサービスを通じて収集したユーザーデータを基に貸金、信用スコア、資産運用などのビジネスを発展させてきた。

しかし、デジタル人民元アプリでは、中銀はユーザーのアイデンティティを知ることになるが、そのウォレットを通じて行われた取引には、関連するウォレットIDが含まれるだけで、他の取引当事者やサブウォレットの銀行はユーザーの身元を知ることができなくなる。これまで特権的な地位を築いていたアントグループは、他の銀行と同列のインターネット銀行になろうとしている。

中国証券報が取材した上海浦東改革発展研究院の金融研究部門長である劉斌によると、前回のテストでは6大国有銀行が中心で、第三者の決済機関は参加していなかった。初期のパイロットは、伝統的な国有銀行とともにパイロットシナリオを見つけたが、伝統的な銀行は、決済、特にモバイル決済の分野ではあまり優位性がなく、仕組みを改善する必要があった。 一方、MYbankが参加した後は、電子商取引、モバイル決済、金融技術などの強みを活かして、デジタル人民元のより幅広い応用シナリオを模索することができ、デジタル人民元の普及と応用にとって重要な推進役となるという。

「MYBank(アリペイ)は、デジタル人民元を使って、WeChat、Meituanなどの他のプラットフォームエコロジーとの相互接続を実現し、デジタル人民元の大きなエコシステムの下(数字人民币大的生态体系下)で、それぞれのエコロジーの影響力を拡大することができる」と劉斌は語っている。これはMYBank(アリペイ)はデジタル人民元の傘下に入り、WeChat、Meituan、Didiと協力してデジタル人民元の運用を支援する技術ベンダーになった、と解釈できるかもしれない。

また、MYBankはデジタル人民元の国際化との協働も指摘している。「アリペイのクロスボーダーeコマースビジネスは、デジタル人民元のクロスボーダーアプリケーションと組み合わされ、アリペイの国際化ビジネスをよりよくサポートすることができ、また、デジタル人民元の国際化シナリオの拡大は、アリペイの国際化を促進することができる」。

10日の別の中国証券報の報道によると、アリペイ側でもデジタル人民元アプリモジュールを追加したという。ユーザーは、ページの指示に従った後、MYbankのデジタル人民元のサブウォレットを開くことができる。

貸金、信用スコアもまな板の鯉

中国当局は昨年11月にアントの370億ドルの新規株式公開(IPO)を阻止。以降、アントへの圧力を強めてきた。

アントは4月上旬に金融持ち株会社に移行すると発表した。アントは持株会社の下に個人の信用スコア事業を設立し、主要な二つの融資事業を消費者金融会社にまとめる。中銀は「包括的で実現可能な再編計画」により、アントは電子決済サービス「支付宝(Aliapy)」と、短期消費者ローン「借唄」、クレジットサービス「花唄」の「不適切な」関係を断ち切ると明らかにした。アントに対し、情報の独占をやめ、信用情報事業の規制に厳格に従うよう求めていた。

4月下旬のFTのレポートは中銀の「指導」の進展を伝えている。中銀はアントに利用者のデータを中銀元幹部が経営する国営企業に対して引き渡すことを求めているという。その会社は、政府が運営する信用スコアのためにそのデータを利用する。これは、アントが運営する信用スコアサービスである芝麻信用と競合する。その国営企業は、信用スコアをアントの貸金業と競合する国営金融機関にも提供する考えだという。つまり、アントに国営企業への無償の協力を要求している。

結論

アントの主力事業である決済のうち、店舗で行われるオフライン決済や少額の送金は、デジタル人民元によって代替される可能性がある。電子商取引の決済・エスクローなどはシステム要件が厳しいため、デジタル人民元がまだそれを代替できないようだ。残りの貸金、信用スコア、資産運用については、国営銀行への協力や事実上の譲渡、規制すり抜けの優位性の排除などが想定される。

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※Axion Newsletterはアントの上場停止前から、デジタル人民元による政府中銀の目論見を予測していました。こちらの記事です。

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