1月初旬のBloombergの報道によると、TSMCは、4ナノメートルプロセス(nm)をベースにしたIntelの半導体製造を提供する準備をしており、初期テストでは5nmを使用しているという。また、IntelはSamsungとも協議中であると伝えられているが、これらの協議はかなり予備的な段階にあると伝えられている。
Intelが直面している最大の問題は、同社が最先端の製品をファウンドリにどの程度依存するかだ。ここ1年ほど、Intelは幅広い製品ラインナップの製造をファウンドリに委託する考えを明らかにしてきたが、どの半導体製造会社がどのビジネスを獲得するかは発表してこなかった。
ロイターによると、Intelは、次世代グラフィックスカード「DG2」をTSMCで製造する予定で「まだ名前の出ていない強化された7nmノード」で製造する予定という。TSMCは7nmのチップ製造をN7、N7P、N7+の3つのラインナップで販売している。N7PはオリジナルのN7ノードに性能強化を追加したもので、N7+はEUV(極端紫外線)リソグラフィを導入したものだ。
半導体業界調査会社TrendForceの最新調査によると、Intelは非CPUチップの約15~20%の生産を外注しており、これらの製品のほとんどがTSMCと同じく台湾のUMCに割り当てられているという。同社は21年下半期にTSMCの5nmノードでCore i3 CPUの量産をキックオフする予定だが、IntelのミッドレンジおよびハイエンドCPUはTSMCの3nmノードで22年下半期に量産に入る、とTrendForceは予測している。
Intelはここ数年、10nmと7nmプロセスの開発に失敗しており、市場での競争力が大きく損なわれている。Armアーキテクチャをベースにしたスマートフォン用プロセッサに関しては、TSMCのプロセス技術のブレークスルーにより、AppleとHiSiliconが競合他社に先駆けて最先端のモバイルSoCを発表することができた。
CPUに関しては、同じくTSMCにCPU生産を委託しているAMDが、IntelのPC用CPUのシェアを徐々に脅かしている。さらに、Intelは、昨年Appleが発表し、TSMCが製造したApple Silicon M1プロセッサを搭載したMacBookとMac MiniのCPU受注を失った。M1の性能の高さは業界を驚かせ、Intelから転換を正当化した。スマートフォンとPCのCPU市場のシフトにより、IntelはCPUの製造を外注化する意向を表明することとなった。
TrendForceは、製品ラインの外注化が進むことで、Intelはマージンの高いチップの内製化ラインを維持しつつ、先進的な研究開発に支出を効果的に配分することが可能になると主張している。また、TSMCは、Intelが製品開発時に利用できる多様なソリューションを提供している。全体として、Intelは、TSMCの生産ラインを採用することで、より柔軟な計画が可能になり、様々な付加価値の機会にアクセスできるようになる。同時に、Intelは、先進的なプロセス技術を用いたCPUの製造に関して、AMDと同レベルになるチャンスを得ることができると主張している。
昨年9月にはJ.P.Morganが、Intelが5nm CPUの量産に向けてTSMCへの製造委託を開始し、TSMCが6ヶ月から1年早い2022年前半に生産を開始すると予測したとする報道が台湾の経済日報から出ている。報道によると、J.P. Morganの技術産業調査部長Hagel Valleyは、Intelの5nmが量産される前に、TSMCには同じ先進の7nm技術を採用するIntelのXe GPUの受注を獲得するチャンスがあるとされる。
Intelは昨年10月、NANDベースのフラッシュメモリ部門と工場を韓国のHynix社に90億ドルで売却すると発表した。これにより、Intelは研究開発に集中し、半導体製造から撤退するのではないかという以前からある観測が加速した。
製造技術が複雑になるにつれ、18~24ヶ月ごとに新しい製造ノードを導入することは難しくなってきている。Intelのチック・タック戦略は、製造プロセス微細化の継続が困難を極めていくようになったことで事実上破綻した。他社の5nmと同等の性能を持つと考えられるIntelの7nmが、2021年の後半に生産が開始されたとしても、他社の5nmは2020年の半ばから出荷しているので、約1年遅れている。
IntelのCFOであるジョージ・デイビスは、2020年3月に開催されたモルガン・スタンレーのアナリスト・カンファレンスで、Intelの新しい10nmのチップは、14nmノードはおろか、22nmのものよりも収益性が低いと說明し、物議を醸した。
ただし、ファブを保持し続けることには明確なアップサイドも存在する。Intelは自社製造能力により、AMDやNvidiaが苦しんだような世界的なコロナの大流行の後の供給不足をほぼ回避することができた。また、インテルの厳格に管理されたサプライチェーンは、基板やパワーICなどの二次部品など、半導体生産のあらゆる面に影響を与えている不足の波に対処するのに役立っている。
外注化は大規模には実現できないかもしれない。IntelはTSMCの2倍以上の半導体製造能力を持っており、TSMCはすでに容量の制約を受けていることを考えると、大規模な長期投資を行わなければ、Intelの膨大な量を満足させるだけの製造能力を持っていないことは明らかだ。チップ生産の一部を外注することで、Intelは供給能力の問題にさらされる可能性があり、生産を外注すればマージンが低下する可能性がある。
ボブ・スワン最高経営責任者(CEO)は最近、Intelがサードパーティのファウンドリを戦略的パートナーとして採用することになったとしても、Intelは独自の最先端ノードの開発を継続し、独自の7nmノードの「修正」を展開していると述べた。
ただこのスワンCEOは2月15日をもって退任し、IntelのCTOやシニアヴァイスプレジデントなどを務めたパット・ゲルシンガーが復帰し、CEOに就任する、とIntelは今週発表した。来週には、今年最初の四半期決算報告を控えており、最後のアーニングコールとなるスワンCEOからどのような方針が語られるのかが注目されている。
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