Facebookの仮想通貨がモバイル決済に使われる日は来るか?

政府中銀はCBDCと規制の二刀流

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要点

Facebookのデジタル通貨Diem(ディエム)はスイスから米国に拠点を動かした。米国が中央銀行デジタル通貨(CBDC)への興味を高めている中、Diemはモバイル決済への暗号通貨利用を実現できるか。


先週、Facebookの暗号通貨Diem(ディエム)を運営する非営利団体Diem Association(ディエム協会)が、その主要な活動拠点をスイスから米国に移すと発表した。

暗号通貨「Libra」の取り組みから発展し、26人のメンバーによって運営されているディエム協会は、リリースの中で、完全子会社であるDiem Networks U.S.社とシルバーゲートキャピタル社がディエムの米ドル建てステーブルコインを独占的に発行するという取り決めを結んだことを明らかにしている。

ステーブルコインとは、その価値がコイン以外の資産に固定されている暗号通貨のことで、価値が比較的一定の米ドルなどの不換紙幣や、金などの資産に固定されていることが多い。

リリースによると、Diem Networks U.S.社は、Diem Payment Network(DPN)を運営する。このネットワークでは、ディエムのステーブルコインの送金を行う。Diem Networks U.S.社は、パーミッションドブロックチェーンベースの決済システムであるDPNを運営し、承認されたネットワーク参加者間でのDiemステーブルコインのリアルタイム送金を促進する。

昨年11月にFacebook ResearchのリサーチエンジニアMathieu Baudetらは、Fastpayと呼ばれる決済手段を提案していた。Fastpayは即時グロス決済の一種で、暗号通貨と法定通貨の双方に適用可能。店頭決済に適しているという。実験室環境では、20の権限で毎秒80,000以上のトランザクションを達成しており、これは現在の小売カード決済ネットワークの要件を上回ると同時に、その堅牢性を大幅に向上させていると、Baudetらは主張している。

想像をたくましくすると、Facebookがステーブルコインを手にしたとき、これらの技術のいずれかを実装し、彼らが真似をしたいと望んできたWeChat(微信)のように店頭決済に参入してくるかもしれない。ただし、早ければ年内にもドルベースのステーブルコインが発行される可能性があると報じられていたが、ディエムはリリースの中で、米国でのステーブルコインの発行時期については言及していない。

新しいモデルではFINMAのライセンスは必要ないため、ディエムはスイス金融市場庁(FINMA)への決済システムライセンスの申請を取り下げた。シルバーゲートキャピタル社は、カリフォルニア州公認の銀行であり、連邦準備制度に加盟している。また、Diem Networks U.S.社は、米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)にマネーサービス事業者として登録する。

準備金の仕組み

ディエム協会はFINMAに決済システムのライセンスを申請していた際は、準備金の仕組みをドルのフルバッキングと定義した。フルバッキングとは、準備銀行が流通している各Libraコインの額面金額に相当する額を、現金または現金同等物と超短期の政府系有価証券で保有することを意味する。これは、預金負債の裏付けとして現金やその他の流動性資産の一部(例えば10%)のみを保有し、残りの資産は貸付金やその他の非流動性資産で構成されている銀行とは異なる仕組みだ。

信用リスクが非常に低く(例:S&Pの A+格付け、ムーディーズのA1格付け以上)、流動性の高い流通市場で取引されている政府又は政府関係機関が発行した超短期(残存期間3カ月まで)の政府証券を最低80%程度保有することを申し出ていた。残りの 20%は現金で保有し、同じリスクと流動性プロファイルを持つ短期(残存期間 1 年まで)の政府証券に投資するマネー・マーケット・ファンド(MMF)をオーバーナイト取引(その日のうちに決済せず、翌日まで持ち越すポジションをとる取引)する。

バージョン2のホワイトペーパー(2020年4月)によると、準備金の運用部分がもたらす収益は「協会によって監督される」という。Libraコイン保有者が、リザーブからリターンを受け取ることはなく、協会のもとに残るのだ。この仕組みに関しては、アントグループがアリペイのサービスとして提供するMMFである「余額宝」と比較すると、余額宝の方が利用者にとって十分な利点を提供していると言えるだろう。

さて、これをFINMAから取り下げ、米国でドルのステーブルコインを作るとき、Diemはどのような準備金の枠組みを設定するのだろうか。いずれ、Diemがどのような絵を書いているのか明らかにされる時が来るだろう。

参考

  1. Mathieu Baudet, George Danezis, and Alberto Sonnino. 2020. FastPay: High-Performance Byzantine Fault Tolerant Settlement. In Proceedings of the 2nd ACM Conference on Advances in Financial Technologies (AFT '20). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 163–177. DOI:https://doi.org/10.1145/3419614.3423249

  2. 吉田拓史. Facebookの暗号資産 Libra (リブラ) 2.0の解説.

  3. "Libra WhitePaperV2". Diem Asscociation. April, 2020.

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