パランティアの悲劇的上場

企業価値は200億ドルから78億ドルまで急降下

Palantirの共同創業者ピーター・ティール. "Peter Thiel" by jdlasica is licensed under CC BY 2.0

パランティア(Palantir)の直接上場が9月23日に迫っているが、同社のバリュエーションについては心もとない状況になっている。

パランティアが公開市場でどの程度の評価額を得ることができるかは不明だ。投資家は2015年に同社を200億ドルで評価していたが、調査会社PitchBookは最近、類似企業の収益倍率を使用して、同社の評価額を88億ドルとしている。

CMBCによると、直近四半期のプライベート市場での平均株価取引額は6.45ドルであり、これに基づくと同社の企業価値は105億ドル強となる。7月にパランティアは1株4.75ドルで株式を売却して4億1,050万ドルを調達したが、これは約78億ドルの企業価値を示している。

米国ソフトウェア・プログラミング産業の株価売上高倍率(PSRマルチプル)の平均は、2020年第2四半期時点で9.04倍。2020年会計年度の収益予測を使用した場合、パランティアの株価売上高倍率は20.79となり、現在の業界全体の倍率と比較して129.98%のプレミアムがあることになる。倍率12のセールスフォースや倍率11強のマイクロソフトと比べても格段に高く、唯一アドビが同水準という状況だ。

これらの企業とパランティアには大きな違いがある2つある。1つが、3社は高利益率を誇るが、パランティアは一度も利益を上げたことがない点。もう1つが、三者はサブスクリプション型の事業を展開し、経常収益を享受しているが、Palanrtirはライセンスを販売する体裁は整えているものの、実態はSierと変わりない。収益性の低い傾向のある事業だ。詳しくはこちらのブログで詳述した。

懸念材料は他にもある。同社の収益基盤が非常に狭いことだ。同社は、トップラインの成長を牽引するために、政府との契約に依存する傾向が強まっている。例を挙げると、同社がこれらの政府契約から得た収益の割合は、2019年の45%から2020年上半期には53.5%に急増している。さらに、同社の総収益の約3分の1は、わずか3社の顧客からもたらされている。これは、同社が2019年の総収入の61%を営業・マーケティングに費やしていることを考えると、驚くべきことである。

同社は公開取引を開始する前に株主によって取引された株式の最新のセカンダリーセール取引データを提供したが、このデータから直接上場が迫る中、いまだに同社の約半分を所有している同社のインサイダー(創業者、従業員、その他の関係者を含む)は株式売却を加速させていることがわかった。

テッククランチによると、パランティアは、最近株式公開を申請した他のハイテク企業と比較して、インサイダーの数が多い。同社の直近のS-1によると、同社はクラスAの株式を2,794人、クラスBの株式を738人所有している。これら2つのグループの間にはほぼ確実に重複があるが、今日のパランティア株の所有者が何千人もいることを示している。所有者数が1,026人だったSnowflakeや473人だったSumo Logicと比較すると、かなり多い。

パランティアのインサイダー数が多いのは、会社の歴史が長く(20年近く)、初期の従業員や最近の従業員の多くは、ストックオプションの有効期限が切れないように今までに行使しなければならなかったことが関係している。

直接上場には、通常、従業員やインサイダーにはロックアップ期間があるが、しかし、8月下旬時点の報道では、目論見書を見た複数の関係者によると、同社は株式のロックアップ期間を設ける予定だとされている。直接上場直後の株価の低迷のリスクを見越したインサイダーがそのリスクをヘッジするために、プレイベート市場で株式を売っていると推測することは可能だ。

FTによると、パランティアの共同創業者でありベンチャーキャピタリストであるピーター・ティールは、創業から同社の株式の一部を売却してきたと、売却に詳しい関係者は述べている。

SOMPOは企業価値75億ドルで投資

SOMPOと富士通は6月にパランティアへの投資を発表している。SOMPOは5億ドル、富士通は5000万ドルを投資した。このときの企業価値は明らかにされていない。この前のラウンド(約5年前)では約200億ドルの企業価値をつけていた。

S-1によると、SOMPOは議決権の少ないA種株を107,526,881株保有している。SOMPOは5億ドルでこれを購入したため、買収時の株価は4.65ドル、企業価値は約75億ドルだったということだ。直近四半期の平均株価取引額4.75ドルなので、妥当なラインだったと言える。

パランティア上場にはまだ注目する点がある。それは、モメンタムの悪い企業の直接上場に対して、オークションによる値付けのメカニズムがどのように働くか、ということだ。

同時期にデータウェアハウス企業のSnowflakeのIPOが予定されるが、ウォーレン・バフェットは5億7000万ドルを投資すると報じられている。Snowflakeは、伝統的なSierであるパランティアとは異なり、クラウドネイティブの現代的なソフトウェア企業だ。

どちらに賭ければいいかは明白だろう。

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