今夏、全世界でデジタルサービス税が成立する

ロビイングし放題のトランプ政権終焉が引き金に

ドイツのオラフ・ショルツ財務相は1月末、ジャネット・イエレン米財務長官と電話で話した翌日、OECDレベルで夏の期限までにデジタルサービス税制に関する取り決めが行われる可能性が「非常に高い」とメディアに対して語った

2020年6月にデジタルサービス税に関するOECD主導の他国との協議を中断したスティーブン・ムニューシンの後任として、イエレンが米上院財務委員会の全会一致で採決された。イエレンは1月中旬の上院の公聴会で、ビッグテック企業に対する世界的な徴税を支持した。彼女はまた他のOECD諸国との交渉に米国が積極的に参加することを約束しているという。イエレンが多国籍企業への効率的な課税が優先事項であると強調したことで、交渉再開に向けた企業の信頼感は高い。

彼女の姿勢は欧州諸国と多くの共通性を持っている。彼女は元連邦準備制度理事会(FRB)議長は炭素税の長年の提唱者であり、長年にわたり気候リーダーシップ評議会(CLC)のメンバーだった。

1月27・28日に開催されたOECD / G20 Inclusive Frameworkの公開会合では、カナダ、ドイツ、イタリア、インドネシア、ジャマイカ、英国の財務相が、多国間のデジタル税の必要性を強調したが、それ以上の作業はまだ必要だ。

デジタル税は「第1柱」と「第2柱」の柱(Pillar)構造と、柱ごとに層(Tier)が設定されている。OECDは、2020年10月から12月にかけて行われた第1柱と第2柱の青写真(ブループリント)に関する協議において、3,000 ページを超えるステークホルダーからのコメントを受け取った。このような大量のフィードバックにもかかわらず、パリに拠点を置く OECD は、いくつかの見解の類似性に基づいて、広範囲に及ぶコメントを結びつけることができた。

イエレンはIF会合には出席しなかったが、最初の1週間はフランス、ドイツ、イギリスなどの財務相と財政問題での協力についての会話をするなど多忙を極めている。

ムニューチン前財務長官の下での米国の立場は、大多数の国には受け入れられなかったが、ワシントンDCで権力が交代したことで、「新しいアプローチ」に希望が持てるようになった。とはいえ、スペインなどの国が個別にデジタルサービス税の導入を進めるなど、ビッグテックが本拠地を置く米国と他国との間では貿易面での緊張が続くことが予想される。

背景: 各国の実物資産に代表されない存在への課税の確立方針

各国がデジタルサービス税を主張するのは、GoogleやFacebookのようなデジタルプラットフォーム企業が利用者の存在する国において法人税を十分に支払っていないと考えられているからだ。デジタル企業の法人税負担が店舗を構える等の伝統的な方法でビジネスを行う企業に比べて低いとされ、国際社会で問題視されている。

現在の国際課税のルールでは、ユーザー国でプラットフォー ム企業に法人税を課すことは難しい。例えば、Appleが初めて採用し、GoogleやAmazonも追随する租税回避スキーム「ダブルアイリッシュ・ウィズ・ア・ダッチサンドイッチ」(Double Irish with a Dutch Sandwich)は各国の足並みが揃わない限りは太刀打ちができない。「抜け穴」を提供することで利得を得ようとする国家を包摂する必要がある。

OECD加盟国の努力にもかかわらず、特にテクノロジー企業のロビイングに非常に脆弱なトランプ政権の米国が足並みを揃えないことから、各国は暫定的対応をしてきた。

その中でもフランスはもっとも急進的だ。2019年6月26日に法案が下院を、同年7月11日に上院を通過し、同月24日にマクロン大統領が署名を行い、翌日から施行されている。対象となる事業は、オン ライン広告、広告目的でのデータ販売、仲介プラットフォーム事業だ。国内で2,500万ユーロ以上、世界で7億5,000万ユーロ以上の収益を上げている企業に対しデジタル課税を適用する。フランスは昨年11月にビッグテック企業にデジタル税支払いを通達し、FacebookとAmazonは税法を遵守する旨を伝えていた。

2020年4月に導入された英国のデジタルサービス税では、ソーシャルメディア、検索エンジン、またはオンラインマーケットプレイスを英国のユーザーに対して提供する大企業の収益に対して2%を課税するものだった。英国政府は税収として年間5億ポンドを見込む。

もちろん、グローバルな租税回避はデジタルプラットフォームに限定される話ではない。より伝統的な非難の対象とされてきたものに、海外子会社との取引を通じて利益を移転する租税回避スキームがある。

多国籍企業による税負担の意図的な回避に対しては、かねてよりOECDを中心に対応策の議論が重ねられてきた。その際、電子商取引に対する課税も重要テーマの一つとして取り上げられてきた。しかしながら、法人課税については、各国の利害が錯 綜するため、国際ルールの策定・勧告には至らず、現在に至っている。

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参考文献

渡辺 徹也. デジタルサービス税の理論的根拠と課題. 財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」令和2年第2号(通巻第 143 号)2020 年6月.

蜂屋 勝弘. デジタル課税が税収・企業負担に及ぼす影響と 導入に向けた課題. JRIレビュー Vol.11,No.72(2019).

溝口史子. 英国デジタルサービス税の概要と日本企業への影響. 経理情報 2020.6.10(No.1580)

Josh White. What to expect from the OECD's TP unit in 2021. International Tax Review. January 27 2021.

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