アプリストアの”絶対的権力”が問われる

競争相手と審判を兼ねるApple, Googleの慣行

Apr 22, 2021

毎週火・金曜日発行のAxion Newsletterは、デジタル経済アナリストの吉田拓史（@taxiyoshida）が、その週に顕在化した最新のトレンドを調べて解説するニュースレターです。同様の趣旨のポッドキャストもあります。ぜひご登録ください。

要点

現行のアプリストアのルールでは、AppleとGoogleはプレイヤーと胴元と審判を兼ねる優越的地位を確保している。米最大規模とされるAppleとGoogleの弁護士とロビイストの部隊は、包囲網をうまくかわすことができるだろうか。

米上院議員は22日、AppleとGoogleの関係者に対し、両社のモバイルアプリストアの優位性と、小規模な競合他社を犠牲にして両社が優越的地位を乱用していないかについて質問する反トラスト法に関する公聴会を開催した。

音楽ストリーミングサービスのSpotifyや、Tinderアプリを所有する出会い系サービス大手のMatch Groupなどのアプリメーカーは、デジタル商品の販売に対する強制的な収益分配や、AppleのiPhoneおよびiPad向けのApp StoreおよびGoogleのAndroid端末向けのPlayストアが設定する厳しい取り込みルールが、反競争的な行為にあたると長年訴えてきた。

Spotifyは、Apple Musicの投入以来、Appleとの確執が続いている。Apple Musicの価格は9.99ドルですが、SpotifyはAppleから30％の収益分割を義務付けられているため、価格競争で不利を被っている。Spotifyは、Appleがアプリ内で別の登録方法や支払い方法を提供することを認めていないため、iOSデバイスでは、Apple Musicより多くの料金を請求するしかなく、代替手段がないと訴えている。

この件をめぐり、Spotifyは欧州委員会に対して苦情を申し立てていたが、独占禁止法違反の疑いを概説する異議告知書を夏前に送付する可能性があるとロイターは3月に報じていた。訴状の中でSpotifyは、Appleが自社の音楽サービスApple Musicのライバルを制限していることを問題視している。競争相手がアプリストア規約を設定し、罰せられる審判を兼ねていることだ。

一方、Match Groupは、台湾でのアプリの安全性を高めるためにID認証ルールを追加したかったが、Appleがそれを許可しなかったと訴えている。Matchは、Appleの幹部と連絡を取り、Appleが同社の収益のすべてを取らないことを喜ぶべきだと伝えたと主張した。Appleの幹部は、「あなたは、あなたが稼いだすべての10セント硬貨まで我々に支払う義務がある」と言ったとされる。

Matchのチーフ・リーガル・オフィサーであるJared Sineは証言の中で、GoogleとAppleはデジタル取引の30％を負担しており、消費者の価格を引き上げていると主張。Sineによると、Match社がアプリストアに支払う手数料は年間5億ドル近くにのぼり、同社の最大の経費となっている。

Apple、ベンダーから情報取得しコピー戦略か

さらにコピー製品の疑惑も俎上に上がった。

紛失物発見アプリ・デバイスを提供するTileの顧問弁護士であるカーステン・ダルは、21日に発表されたAppleの新製品「AirTag」が、Tileとほぼ同様の機能を提供しようとしていることを説明した。

4月末に発売されるApple AirTagsは、Tile社の製品が以前から行ってきたように、物を追跡することができる。この新しいトラッカーは、Bluetooth技術を使って、紛失したアイテムを見つけ出す。また、AirTagsにはU1チップが搭載されており、超広帯域技術を用いてより正確な物の位置を把握することができる。このアプローチは、トラッカーの物理的なデザインも含めて、Tile社が何年も前から行っていることと非常によく似ている。Tile社は、Bluetoothを利用して物体の位置を確認していますが、現在、トラッカーに超広帯域機能（および拡張現実機能）を搭載している最中だ。

Tileによると、Appleは自社と似たようなハードウェアを作っているだけでなく、Appleのソフトウェアを自社製品に有利に、Tile社の製品に不利になるように設計しているという。

ダルは上院議員に対し、「Appleは、当社のビジネスに関する多くの情報を知った上で、この製品と競合アプリを発売した」と語った。「彼らは、当社の製品が店頭でどのように売れているかを知っている。当社の顧客が誰であるかを知っている。彼らは、当社のデバイスが店頭でどのように売れているかを知っている。人々がどのような機能を使っているかも知っている。つまり、数え切れないほどのことを知っている」。

これに対し、Appleの代表者であるチーフ・コンプライアンス・オフィサーのカイル・アンディアーは、「AirTagはTileとは全く異なる製品である」と述べている。

図1, 図2. Tile（上）に酷似しているAirTag（下）は、小型アクセサリーで、無料の刻印を施すことができ、iPhoneユーザーは「Find My」アプリを使って貴重品の位置を安全に確認し、管理することができる。via Tile / via Apple.

アプリストア包囲網

AppleのApp Store規則は、米国司法省の反トラスト調査にも直面しており、Appleは現在、Epic Games社とのApp Store規則をめぐる訴訟に向けて準備を進めている。

英国政府は、Appleによる独占禁止法違反の可能性を調べており、公正取引委員会（CMA）の最高責任者であるアンドレア・コシェリはプレスリリースの中で、アップルがその地位を利用して競争や選択を制限し、顧客が機会を失う可能性があるという疑惑は、調査する価値があると述べている。

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