2007年にiPhoneを発表するスティーブ・ジョブズ。このiPhoneが向こう13年間、莫大な富をアップルにもたらすことになった。"File:Steve Jobs presents iPhone.jpg" by Blake Patterson is licensed under CC BY 2.0
1週間のテクノロジー業界の動きをおさらいする「ニュースまとめ」。今週は、米国でアップル帝国が2兆ドルの時価総額を達成し、中国では習近平が独裁国家のフルモデルチェンジに忙しい。「新秩序」への助走が始まった用に見えるが、2020年代は正しい方向に進んでいるのだろか?
メイントピック: アップルが時価総額210兆円を達成
米国時間の19日、Appleの株式が昼間の取引で468.65ドルに達し、一時的に2兆ドルの時価総額に到達。2兆ドルの時価総額を達成した最初の米国企業になった。Appleが時価総額1兆ドルに到達するのに42年かかったが、そこから2兆ドルに到達するのには2年しかかからなかった。
海外に蓄積された資産を米国内に還流する手段として、アップルはトランプ政権が設定した税制が優遇する自社株買いを実行しており。2012年以降の自社株買いの総額は3600億ドル以上である。
実体経済は大不況のさなかだが、株式市場は実体経済とは乖離した挙動を見せている。さらにその株式市場の中で最も富の拡大を享受しているのが、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト(GAFAM)の5社である。これらの5つの企業の合計の価値は、株式市場が底を打った3月23日以来、ほぼ3兆ドル膨らんでいる。この富の凝集は社会にとって好ましいものなのだろうか。
特にこの中でもアップルの時価総額の伸びは著しい。バークシャー・ハサウェイのポートフォリオの中核を占めるようになり、サウジアラムコを凌ぐ世界で最も勝ちのある企業の座を確かにしている。
そして、持たざる人たちは、コロナに感染しても医療費がはらえないために診療を受けなかったり、コロナの影響で失業し、家賃をはらえなかったりしている。この2兆ドル達成には、明るい祝福のムードだけではなく、ダークなディストピアのムードが伴っている。
米国
米半導体メーカーのNvidiaの第2四半期決算がアナリスト予想を超えた。収益; アナリスト予想の36億5000万ドルに対し、Refinitivによると38億7000万ドル。Nvidiaは8-10月(第3四半期)の収益が約44億ドル(約4700億円)になると予想。データセンター事業者からの需要拡大が理由。
AirbnbがIPOを申請。Airbnbはコロナの影響を受け、310億ドルの企業価値が、半分程度まで減少。今年の収益は2019年の半分と予測され、1900人をリストラ。それでも、持ち直し上場申請にたどり着いた。
シアトル市のライドシェアドライバーの報酬は最賃以下。配車企業のビジネスモデルは、ドライバーの低賃金労働を是正すると、破綻する可能性が高い。「ドライバーの時給は約21.53ドル。11.80ドルの経費を差し引くと、時給は9.73ドルで、最低賃金を大きく下回っている」。
Gmail、Drive、Docs、Meet、Groups、Chat、Keep、Voiceなど、Googleのサービスの多くにサービス障害が発生した。個人とG Suiteのgmailアカウントの両方で、Gmailで添付ファイルをアップロードできなくなるなど、Googleのサービス全体でファイルのアップロードに障害が発生していることを確認された。
カルフォルニア大学バークリー校の学部生Liam Porrが言語生成AIツール「GPT-3」を使って偽のブログ記事を作成したところ、ハッカーニュースで1位になった。機械は容易に人を騙せるようになった。
中国
アメリカの中国との対立は、危険なほどにエスカレートしている。先週、ホワイトハウスはTikTokとWeChat(中国の2つのアプリ)の禁止に相当する大統領令を発表し、香港の指導者に制裁を課し、閣僚を台湾に派遣した。
英経済紙The Economistは先週『習近平は中国経済をリメイクしようとしている』という特集を掲載した。中国の国家資本主義の特徴を、1) 経済サイクルと債務マシーンの厳格な管理、2) より効率的な行政国家、 3) 国営企業と民間企業の境界を曖昧にする、と指摘している。
国営企業と民間企業は曖昧になろうとしている。Axionで取り上げたようにデジタル人民元は、AlipayとWeChat Payを商業銀行の「暗号通貨ウォレットの取扱者」の地位に同列化する可能性があり、国家だけがお金のやり取りのすべてを覗ける仕様を採用している。社会信用スコアは、アントグループの信用スコアと統合され、包括的に中国国民を評価・監視する枠組みとして改変されようとしている。
中国はこれからの10年で全く違う形の資本主義を生み出そうとしてくるだろう。それは欧米の文脈から見ると、余りにも権威主義的な政策のあり方に見えるだろうが、しかし、その枠組がもたらすパフォーマンスの面で、中国を侮ることは危険だ。
習近平の国家資本主義のモデルチェンジへの意欲は本物だ。"World Bank Group President Jim Yong Kim meeting with Chinese President Xi Jinping" by World Bank Photo Collection is licensed under CC BY-NC-ND 2.0
米国と中国の間で緊張が高まるにつれて、中国におけるアップルの特権が危険にさらされている。アップルは他の企業と異なり、中国政府のライセンスや中国国内の現地パートナーを介さずに、App Storeをはじめとする多くのサービスを運営することに成功しているが、The Informationの報道は、中国政府はその特権を取り除こうとしていることを明らかにしている。
アリババの中国の電子商取引における長年の支配力は、JD.comと拼多多によって着実に侵食されている。Covid-19がオンラインショッピングに拍車をかけた後、かつてないほどにマーチャントと買い手を奪い合っている。
オラクルはTikTokの買収に関心を示しており、すでにTikTokの親会社であるByteDanceと予備的な協議を行ったと報じられている。
マイクロソフトチャイナの社員、元アリババ、ファーウェイの社員に996労働の停止を要求。意義を申し立てた社員らは、ファーウェイとアリババの元従業員は競争して残業し、夜中にチーム内で互いにメッセージを送信し、残業文化の定着を図っていると主張している。
日本
コロナ禍のなか我慢の時期が続く
飲食業など対面が必要なセクターの落ち込みは厳しく、それは継続しそうだ。倒産が相次ぐだろう。Photo by Jérémy Stenuit on Unsplash
内閣府が17日発表した2020年4~6月期の国内総生産(GDP、季節調整値)速報値は、物価変動を除く実質で前期比7.8%減、このペースが1年間続くと仮定した年率換算は27.8%減となった。戦後最悪の数値だ。日本にはGAFAMのように、不況下でも市場を牽引するテクノロジー企業の存在感が弱い。今回のGDPを大きく押し下げたのは、個人消費が前期比8.2%減と大幅に落ち込んだことが影響している。コロナ感染の抑制を目指した政府の外出自粛要請で、外食、旅行、交通関連の支出が大幅に減少した。この傾向は、7月、8月に入っても継続している兆候が見られる。
英紙フィナンシャル・タイムズは、日本政府の当局者が今年に入り、日産とホンダに合併交渉を行うよう働きかけたと伝えた。両社とも提案を拒否し、新型コロナウイルス感染症の拡大による混乱もあって計画はお蔵入りとなったとしている。
国内のネットラジオ最大手radiko(ラジコ)の月間利用者は1000万人が視野に入り、民放の動画配信に迫る勢い。
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